はたらくフランス(3)ブラックインターンにはお気をつけを
今回は、フランスのインターンシップについて。
先日インターンの面接を受けたばかりの我が「フランス人学生代表」の彼にインタビューして得た旬な情報をまとめてみようと思います。
- フランスでのインターンの位置づけ
- いつ?どこで?どのように?
- ブラックインターンに気をつけて!
の3本立てです。
フランスでのインターンの位置づけ
日本でも、就活にはインターンを経ることを推奨されています。「就活」のないフランスではどういうスタンスなのでしょうか?
日本と(少なくともうちの大学と)共通する点
- 一般的に大学在学中に行う
日本とは(少なくともうちの大学とは)異なる点
- 卒業要件に必須
- 単位認定なし
- CV、LMなど一式揃える(エントリーシートはない)
- 「就職支援室」からの情報配信などもなし
「支援室」といった大学からのサポートはあてにならないので、自らネットを駆使して求人情報を見つけたり、求人がなくても直談判したりするみたいです。
CVについては、前回の記事でおさらいしてみてください!
shikachan-en-france.hatenablog.com
実は大学生がインターンをするのは当たり前のことです。
いつ?どこで?どのように?
インターンシップを行うタイミングとしては、
- 学士課程3年間のうち1回 : 2年次
- 修士課程2年間のうち2回 : 1、2年次 (毎年)
だそう。
フランスの大学は9月から始まり5月に終わります。この4ヶ月の夏休み中に働きます。
(ちなみに、小中高では9月始まりで、夏休みは7、8月の2ヶ月間です。バカンス開始日程は地域によって異なります。)
期間としては、最低3ヶ月がスタンダード。日本では「長期インターン」の括りですね。
夏休み中とはいえ、早めに授業が終わって、4月から働き出したり6ヶ月間したりすることも。
そんな長期に渡るフランスのインターンの他の特徴は、
- 交通費なし、会社の近くに部屋借りる
- 部屋の手配は自分でやる
- 国内外問わずどこでも
最後のはヨーロッパ市民ならではですね。
しかし、それによって思わぬ罠に引っかかることも…
ブラックインターンに気をつけて!
こんな事例を教えてくれました。
求人情報には
「フランスで働けます」
とあったのに、後日
「実はフランス事務所のポストに空きがないので、ドイツでできますか?」
と言われる、という事例。
さすがヨーロッパ、国境またいで働くのが普通なんだなぁ、と思って聞いていたら、ある落とし穴が。
というのも、これが有給のインターンの場合、労働力搾取になる、というのです。
フランスでインターンするのと同じ内容をフランスではなくドイツで、ということは、ドイツの最低賃金にのっとって、フランスより月200ユーロの差があるほど安く支払われるからです。
騙された…!これがブラックインターンか…!
他の事例としては、能力を図るためとして何度も何度もタスクを送ってくるなど。
これってインターンの内容じゃないの?いつ受け入れ可能の結果がもらえるの?
これは彼の経験談で、有給の翻訳の仕事だったそうですが、合否の連絡もなくひたすら無給で次から次へ翻訳させられる、おかしい、となって断ったそうです。
相談に乗った教授も、それはおかしい、と立派なブラックインターン認定ですね。
きっぱり断ること、大事です!
まとめ
フランスでのインターンは、大学在学中に必須のこと。
でもその内容は、日本のように、就職する前に社会を知れる経験をさせてもらえること。
とはいえ、働くことは働くこと。搾取は認められない。
インターン生でも自分の労働力を正当に評価されることは大切、ブラックインターンにはお気をつけを!
補足
フランスでのインターンに欠かせない他の要素を欠いていました。。。
情報を提供していただいたので、補足としてご紹介させていただきます。
convention de stage(コンヴェンション・ドゥ・スタージュ)という、インターン協定書と損害賠償保険です。
インターンシップを行う際に必須となるこのアイテム、学校などの就職活動に関する事務所で発行することができます。
これによって活動期間や仕事内容、事故の際の保険などについて協定を結びます。
参考記事
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はたらくフランス(2)履歴書を書こう
日本の就活。
先日3月1日から、2018年春に卒業予定の大学生・院生らの採用への会社説明会が解禁されました。
フランスには、日本のような組織立って行われる就職活動期間というものはありません。いずれにせよ良し悪しはあるのでしょうが、日本の就活はつくづく不思議に思います。
とはいえもちろん、フランスでも就職に向けての活動には「型」があります。
フランスで就職活動
就職活動に必要なもの
・フランスでの履歴書にあたるCV(カリキュラム・ヴィタエの略、ラテン語)
・志望動機書(Lettre de motivation、通称LM)
また書類選考後、採用面接(entretien d'embauche)があります。
フランスでは、バイトするにもインターンシップするにもこの一式が必要です。
内容は使い回しでも、応募するそれぞれの職種に合うように心がけます。
それでは、
フランスでの履歴書はどういうもの?
どうやって書くの?
今回特集します。
と、その前にちょっとコラム
今フランス留学中の皆さんにおすすめしたいサイトを見つけましたので、ちょこっとご紹介します。
・フランス留学経験者グローバルネットワーク FRANCE ALUMNI
https://www.francealumni.fr/fr
日本語版はこちら↓
https://www.francealumni.fr/ja/poste/japon/
その名の通り、フランス留学経験者と企業をつなぐ世界規模のネットワークです。
アカウントを登録すると、フランスに関わる仕事を探したり、イベントに参加したりできます。
そして今なら3月29日まで、ロンドンキャリアフォーラム(4月15・16日)のトラベルスカラシップに応募できます!(現フランス在住の学生に限る)
・在日フランス商工会議所
http://ccifj-emploi.mycvthequehq.com/index.php?module=candidat&action=gererDepotCv&langue=en
日本におけるフランス関係企業とのネットワークです。
国内でフランス語の知識を活用できる仕事、インターンシップを探す際に。
どちらのサイトにも、自己紹介を登録するページに「CVをアップロードする」といった文言があります。
CV、それこそがフランスにおける履歴書です。
(フランス語では、「シーヴイ」ではなく「セーヴェー」と読みます)
では、どういうものか見ていきましょう。
形式
経歴の書き方によって3種類あります。
1. 時系列
・クラシックな形式
・一番古い経歴から始める
・昇格していくプロセスを強調
2. 反時系列
・最近の経歴から書き始める
・転職や方向性の変換に強調
3. 能力(compétences・コンペタンス)
・最初の項目に自分の特性
・次の項目には経歴
・失業期などキャリアに穴がある場合に効果的
ちなみに、デフォルトの用紙はありません。
各々自分のタイプにあった形式を選び、項目を立てて書いていきます。
項目
CVの「型」として、以下5つの項目を必ず盛り込みます。
・タイトル:ポストの名称
・プロフィール、連絡先(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日)
・学歴
・職歴
・その他(趣味、好きなスポーツなど1つ2つ)
実は、顔写真は必ずしも付けなければいけないわけではありません。
ちなみに中国人の友人は、もし同じような経歴で甲乙つけがたい場合、顔で選ばれるんだとサラッとした口調で教えてくれましたが、フランスでの事情はちょっと違います。
フランスでは、採用する際に人種差別が起きるのを避けるために顔写真を必須にしていません。
極端な例でいうと、わざと匿名にして選ぶ企業もあるらしいです。どうしても、ムハンマドだったりアリだったりイスラム系アラブ人の名前を見ると、同じくらいの経歴ならヨーロッパ人を、となってしまうことがある、とのこと。
一番は人種差別的なものの見方を持たないこと、なのでしょうが、やっぱりそんな見方はなかなか変えられない、だからそれを避けて能力で雇おうと匿名で選考するという現状に、現実を見ました。
書くときのポイント
履歴書がリクルーターに読まれるのは、30秒間!
なので簡潔で印象に残るように書くことが求められます。
・1枚に収める
・見た目に気を遣う(文字色やフォントに工夫※1)
・顔写真はプロフェッショナルに
・ポストのタイトルを明記
・参照元を明記(URLや元上司のメールアドレスなど※2)
・データ、数値
※1 文字色は2色まで。本文は黒でその他を青や緑など落ち着いた色合いで、濃淡の2色にまとめるのが常識的だとか。
ただしデザイナーなどの職種の場合、履歴書のデザインを凝るのは当たり前。
※2 自分が担当したことのあるプロジェクトなどを書く際に、リクルーターが参照できるものを明記しておくのがマナー。彼らが本当に確認するかは置いておいて、お墨付きが得られるようにしておきます。
そうはいってもやらかしてしまう凡ミス、どうすれば完璧になるの?
レンヌ第2大学のホームページに、面白いコンテンツがあります。
題して「マリーのCV批判」。彼女のCVをどこがよろしくないのか説明しつつ手直しをする動画です。
初めの「悪い例」
手直しして立派になった「良い例」
写真は動画のスクリーンショット
どこがどう変わったか、お気づきになりましたか?
細かいところから言うと、まず内容の分類から直されています。
正しい項目に振り分けた後は、その項目の並び替え。そして年月日と内容の余白を揃えると、もうだいぶスッキリしました。
フランス語の聞き取りにもどうぞ。↓
Critique du CV de Marie | TREK
まとめ
最後に、フランスで就職する際にすることをまとめてみます
・CVとLMを準備する必要がある
(LMについては次回「はたらくフランス」シリーズで取り上げます!)
・CVには用紙がなく、自ら自分にあった形式を選び、項目を立てる必要がある
・CVは見た目も気にしつつ簡潔にまとめる
大学3年生=就活生というような考え方のないフランスでも、抑えておくべき形があります。
やはり、就職するには、多少なりとも「型」をわきまえることが必要になるのですね。
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フランスでフランス語圏の漫画フェスに行ってきたよルポ
今回は、週末に近所で行われた、BD(=フランス語圏の漫画)に関するフェスティバルに行ってきたので、ご紹介してみます。
こんにちは。しかちゃんです。
この頃は小難しい話題が目白押しだったので、ちょっと一息。
今、フランスでの就活について記事を書いているところで、近日アップする予定です。
そちらもお楽しみに!
まず、BDって何?
BD(bande dessinée、バンド・デシネの略)とは、フランス語圏(主にフランス、ベルギー)の漫画のこと。
名称は、「描かれた帯(長方形のコマ)」という意味です。そしてその名の通り、コマはいつも四角で単純な作りをしています。
代表作品に、
・『Tintin(タンタンの冒険)』:記者の少年が冒険して事件解決!シリーズ
・『Asterix(アステリクス)』:カエサルと戦った伝説上の偉人「ヴェルサンジェトリクス」オマージュの、石器時代フランスで大暴れ!シリーズ
が挙げられます。
イラストをじっくり見れる、絵本のような装丁と大きさ。
大人がコレクションにしたいような、細部まで描きこまれて色彩も独特な作品も多々あります。
こんなイベント
オルレアンの街から東におよそ10キロのSaint-Denis-en-Valという街の、Salle des fêtes(市の文化ホールのような施設)にて。
「フェスティバル」とはいえ、こちらはこじんまりとながらも、ちびっこに大人気といった感じでした。
入場料も、大人3ユーロ(2日間だと5ユーロ)、18歳以下無料となかなか良心的。
Bulles en Val – Samedi 4 et dimanche 5 mars | Saint-Denis-en-Val
作家の先生のサインコーナーもあり、賑わっていました。
有料で好きなキャラクターのイラストとセリフを一面いっぱいに。
デフォルメされたキャラクターを無駄な線なくスラスラを描きあげる様はまさに職人芸!
お絵かきコーナーがあり、子ども達が描いたキャラクターを飾る、こんな一角も。
イラストの後ろにあるように、BDの即売コーナーもたくさんありました。ドラゴンボールやワンピースといった日本の漫画のフランス語版も売ってました。
写真は撮りませんでしたが、中にはミッキーミニーのパチモンのパネルを飾ったなんかアヤシ〜イ中古販売ブースがあって、チラチラ見ていると、そこでは買うなと誘ってくれた彼に釘を刺されました。おっとっと。。。
(こういうの、たまにあるんですよね。クリスマスマーケットのあるブースに偽物のディズニーキャラクターのイラストを付けたお粗末なアトラクションを見かけたり。日本の夏祭りでもあるような、テキ屋がフランスにも存在するのだなと。)
他には、BDの制作途中の様子をあらわす展示もありました。
なかなか大胆に描き直しをするみたいです...!
そして、有名なベルギージョークをイラストにしたものも。
ご存知でしょうか?
”Comment faire enrager un belge ? On lui demande l'heure.”
「どうやってベルギー人を困らせる?彼に時間を尋ねるんだ」
”Là, il veut regarder sa montre et renverse son paquet de frites.”
「そしたら、彼は腕時計を見ようとしてフライドポテトの袋をひっくり返す」
\どっひゃー/
ってね。
週末の過ごし方
こんな風に、フランスの市民文化ホールがどのように使われて、フランスの小さい子どものいる家族は何をするのか、垣間見れた週末でした。
こういう大衆的な部分というか、その街に住む人々の普段の生活を感じられる場面って、観光するだけではなかなか見られないところだと思います。やはり長期滞在ならでは。
留学生って、休みの日は旅行や遊びに行くか室内にこもって勉強するか、割とこの二択に絞られるような感じがあります。が、そこを近所のまちや片田舎へ訪れてみて、普通の人々の普通の暮らしを体感してみるのはどうでしょうか?
私の留学生活も折り返しを迎えましたが、引き続きこの線でいくつもりです。
わくわく。
はたらくフランス(1)フランス人はプレミアムフライデーなんていらない
はじめに
「仕事に貴賎はない」とは、うちの大学でフランスの企業社会に関する授業を受け持つ教授、マダム・ドゥ・スタンパ。
スーパーのレジ打ちを例に挙げ、あの右から流れてくる商品をピッとして左に流す作業はかなり身体にくる、とけっこう大変な仕事なんだと話しておられました。
フランスのレジのおばさん・お姉さんは座ってやってるのに(!)、日本の立ってレジ打ちされる方々はなんて重労働をなさっているんだろうか、と衝撃でした。
こんにちは。お仕事お疲れ様です。
フランスで年に2回行われるバーゲン「solde・ソルド」(法律で定められている)を逃しそうな、購買意欲のないしかちゃんです。きっと、お仕事して自分で稼いだお金を手にしたら、買い物したくなるんだろうな。
さて、仕事といえば。
日本のホットな話題、「プレミアムフライデー」導入が気になるところ。
そして、フランスではどうなのでしょう?
・働き方
・就職方法
これから何回かにわたりシリーズで取り上げてみます。
日本のプレミアムフライデー
先の金曜から始まった日本の「プレミアムフライデー」とは、ざっくりまとめると、月末金曜は早めの仕事終わりを目指す官民一体の制度だそうです。(なぜ英語...?)
その実態は?
サラリーマンの父の職場では、「プレ金、全くなし(`д´)」(おこだ)
フルタイムでサービス業に従事する母は、「導入は、まず無理でしょうねえ。「早帰り日」として、今んところは「ノー残業デー」にするくらいかなあ~😅」とのこと。(おっと。残業がデフォなんですね...)
フランスでの働き方
日本と同様、仕事は基本的に土曜日曜お休み。
しかし、サービス・小売業は月曜休業もしくは午前休!
例えば、買い物しようにも服屋はやってないし本屋は14時からだし、スーパーくらいしか開いてない(※大型スーパーは月曜から土曜)。
サービス・小売業は土曜もやっているので、開店は火曜から土曜として、週休2日を確保しています。
昼休みも長め。12時〜14時くらい。写真はボルドーのとあるカフェ。店名が「Le café français(フランス(人)のカフェ)」だなんて、まんますぎる。ひと休み。
日本の快適な営業時間に慣れきってしまった私からすれば、ちょっとおでかけしたい日曜なのに空いてないとか、そろそろ閉店だからって客いるのにモップのついたゴルフ場のカートみたいな乗り物で掃除始める(大型スーパー)とか、なんだかなぁと思ってしまうのですが、、、
こちらでは当たり前のことなので、フランス人は不便に感じていないみたい。
(ただし日本に留学経験のあるフランス人の彼は、この店の状況に対しことあるごとに「日本に戻りたい…」と言っております。気の毒に。)
でもまぁ住めば都、適応できればそれまでのことです。
まとめ
そんな月末金曜当日、東京では石原経済財政・再生相はお買い物で、加藤働き方改革相は百貨店の買い物客を視察だったそう。
居酒屋が賑わったり、デパートでセールなどのイベントが活発に行われたり。そういう視点から見れば確かに経済への起爆剤となるでしょう。
しかしこれでは、早く仕事を切り上げた人が行く先となる飲食店やデパートといったサービス・小売業で、プレミアムフライデーを健全な働き方改革として享受できるはずはありません。
ホワイトカラーサラリーマンの財布の紐を緩ませることが第1目標である限り、「働き方改革」にとってはきっかけにすぎない。サービス・小売業の働き方・休み方を考える一歩になるか、注視したいところです。
ところで、フランスでは、駅前のショッピングモールも20時そこらで閉まってしまうので、夜はバーの集まる通り以外は寂しいもの。早く家に帰ろうという気になります。
さすがコンビニなんてないフランス、多少無理しても開けるという発想は持ち合わせていないようですね。でも、働く側から考えると、ありがたいことだと思います。
おわりに
ちなみに、、、「フランスと日本、働くならどっち?」と聞かれたことがあります。
営業時間だけでなく、バカンスや育児休暇の制度も整うフランス、私は「制度はフランスがいいけど、一緒に働くのは日本人がいいかな」と答えるようにしています。なんつって。
参考記事
自立した若者とバレンタイン
ここの大学では、soirée(ソワレ、パーティーの意)はたいてい木曜日の夜に行われます。うちのクラス金曜朝8時から授業あるから行けない...
なぜって?それは金曜日の放課後にみんな実家に帰るからです。
そして、日曜夜もしくは月曜朝にトランクをゴロゴロ引きずって大学へ戻ってくるフランス人学生をよく見かけます。
日本では実家から遠い大学に通っている私は、実家暮らしや頻繁に帰れるのを羨ましく思っていました。
私の中国人の友達は、高校から全寮制が当たり前らしく、日本の高校生の恋愛映画を観た際、「どうして放課後いちいち家に帰るの?」と思っていたそうです。ほとんどの日本人は家から学校に通ってると答えると、なかなか驚いていました。
自立するってどういうこと?
自立の定義を、簡単に実家の外に自分の生活の基盤を置くこととすると、文化や習慣の違いがよく見えてきます。
先ほど中国の例を挙げましたが、ちなみに、結婚後は2世帯・3世帯が伝統的なんだそう。ですが全体的に核家族化傾向です。
ヨーロッパにおける、実家暮らしの若者(25歳から34歳)の割合を表した地図があります。一般的に、北欧の若者は親元を離れて暮らしていて、南欧ではそうでないことがわかります。
この地図は、@AmazingmapsというTwitterアカウントが一昨年発表したものです。こちら、他にもたくさんの地図を紹介しています。ちなみに私がお気に入りなのはこれ。「デンマーク人はどのようにヨーロッパを見ているか」
How Denmark views Europe... pic.twitter.com/sQaM14lbKJ
— Amazing Maps (@Amazing_Maps) 2016年11月11日
それはともかく、デンマークはヨーロッパ1の自立度を誇っています。その訳は、学生に優しい制度が整っていること(学生時代6年間、月650ユーロ支給)若者の失業率が低いことなどが挙げられます。
このように、国の政策や経済状況によって、若者の実家暮らしの割合は左右されます。
金融危機に苛まれたギリシャでは特に高い割合なのが見て取れます。
しかし、実家の方が快適だから留まるパターンもあります。イタリアの例を見てみましょう。
親の本音は、出て行ってほしい?
イタリアでは、伝統的に息子をちゃんと育てることが重要視されるらしく、そのような背景で割合は高いです。
そんな中、母親たちの現状を歌とダンスでポップに伝えるミュージックビデオが出されました。これは、ある銀行が経済的にも自立した若者に対する融資サービスの顧客拡大を画策して打ち出したものだったのですが、イタリアの母親たちから広い共感を呼んでいるそうです。
題名の"Smammas"とは、イタリア語でお母さん(複数形)という意味の"mammas"と、立ち去れという意味で"mammare"の言葉遊びです。ビデオでは、「子供」が散らかした部屋をうんざりしながら片付ける姿が見られます。(下のサムネイル画像は、同じ境遇の母親たちが隊を組んで歌い踊るシーンから。さすがイタリア。)
フランスの若者
それでは、フランスはどうでしょうか。地図を見ると、隣国ドイツ・イギリスほどは高くないが、それでも低くはないといったところでしょう。
フランスには、学生住宅保障(la Caisse d'Allocations Familiales - CAF)という社会保障制度の一環のallocation(アロカシヨン、手当金)が支給されます。ちなみにこの制度はヨーロッパ唯一で、寛大にも外国人学生に対しても適応されます。
今改めて思ったんだが、私マイページみたいなの開設したのちの記憶がないぞ...ちゃんと適応されているのだろうか。こないだ第2セメスターの寮費ふつうに払ったし...なんかお腹のあたりぞわぞわする。
しかし、それでは若者の「自立」促進には繋がらないらしく。この辺りの割合にとどまっています。
Tanguy現象
ところで、フランスでは、25歳から34歳になっても親の家で住み続ける若者を、「Tanguy(タンギー)世代」、その世代の登場を「Tanguy現象」と言います。日本でいう「パラサイトシングル」の専門用語と広義は共通です。
Tanguyはフランス人男性の名前です。誰?
2001年に放映されたコメディー映画"Tanguy"の主人公、タンギー君です。
彼は28歳。研究のため学生をやっており、実家に暮らしています。
この映画の中で、このような「新しい世代」の現状が描き出され、有名になりました。
映画のワンシーンを観ましたが、なかなかパンチが効いていました。例えば、退職して余生を楽しもうとする両親が夕食後ちょっとリッチなワインを嗜もうと思ったら、勝手に息子に考えなしでパーティーに持って行かれてた、とか、彼が論文執筆の進行が芳しくなくてまたこの状況がズルズル続くけど実家にいていいよね?ボクが残るのお母さんも嬉しいよね?って話したりとか。
一般的に、こういう場合、ネガティブなニュアンスがあります。ただ、社会的な訳もあり、一概に若者は実家を離れて暮らせばいいんだと言うこともできず。もどかしい面があります。
これについてどう思うか、私の身近なフランス人でこのまま博士号を目指すとTanguy世代に手が届きそうな彼に聞いてみたところ、あまり否定的には捉えていないみたいです。勉強か仕事かはしていて、別に何もせず親の臑を嚙る訳でもないし。ただし一般論として、そのくらいの年齢でまだ実家暮らしだと、恋人を連れて行くのは気まずいしそういうカップルは長く続かないんじゃないか、と答えてくれました(さすがフランス人)。
そういえば今週の火曜日はバレンタイン。
彼はこの間の1周年記念ディナーで金欠のため、多分バーガーキング です。フランスのバーガーキングにだけ、期間限定カップル用ストロー付きカップがあるとネットニュースで見かけたので(さすがフランス)、野次馬根性で見てこようかな。
フランス大統領、その役割とエピソード
2017フランス大統領選。
よく朝の支度の際にフランスのラジオを流しているのですが、この頃頻繁に政治の話を耳にします。
この前フランス人と話していて、「日本の大統領どうなってるの?いないって本当?」と聞かれました。
それってそんなにおかしなことかな?それなら私はフランス大統領の女性関係スキャンダルが気になる、、、
今回は、フランスの大統領って?誰がどんなことをしているのか?まとめてみたいと思います。
第五共和政における大統領
フランス革命でルイ16世をギロチンで処刑してから確立された政治を第一共和政とし、シャルル・ド=ゴール将軍がアルジェリア戦争を背景にし1958年に打ち立てた第五共和政が今でも続いています。
・直接普通選挙によって選出
(選挙権のあるフランス人(18歳以上、重犯罪者以外など制限あり。新成人は事前に各自治体にて選挙リストに登録が必要)
・任期5年(最大2期まで可能)
シラク氏の任期中に、以前の7年から短縮されました。そのため彼は2期12年大統領を務めました。
官邸であるエリゼ宮は、パリ8区にあります。毎週水曜日の朝には大統領と各大臣の会議が行われます。
内政、軍関連
外交、国際関係に責任を持ち、協定や条約に署名する。
核兵器使用の決定権を持つ。
戦争時やテロの脅威下などといった国の非常時には、憲法16条により大変広範な権威を持つ(しかしその期間中は国民議会を解散できない)。
モンテスキューを生んだフランスは、その三権分立を行なっています。
大統領は、立法権・行政権・司法権のうち、行政権を担います。
行政権関連
首相を指名し任命、首相とともに各大臣を任命。
また憲法制定協議会議長及び9人中3人の役員を任命する。
大統領は閣僚会議にて議長を務める。
政府によって決定された法令に署名する。
軍・文民(政府高官)のポストを任命する。
司法権との関係
恩赦を与える。
立法権との関係
国民会議(l'Assemblée nationale)の解散
法律の公布(でなければ法律は効力を持ちえない)
法律を通すためレファレンダム(国民投票)を使って国民に意見を求める(憲法改正案など)。
コアビタシヨン
もし大統領と国民議会の大多数とが異なる政治的立場の場合、大統領は国民議会の大多数と同じ政見の首相を選出します。これを「コアビタシヨン(cohabitation・共存)」と言います。
右派でRPR党のシラク政権下にてこの状態が発生し、首相には国民議会の多数と同じく左派で社会党のジョスパン氏となりました。
第五共和政、歴代大統領とそのエピソード
シャルル・ド=ゴール将軍
妻イヴォンヌは献身的なイメージで語られた。
当時、大統領のプライベートは不可触で想像もされないものだった。
ジョルジュ・ポンピドゥ
初めて自らサロンにメディアを呼び、妻クロードゥとともに「大統領夫妻」を演出。
ヴァレリー・ジスカールデスタン
ポンピドゥのようなメディア戦略を継承し、妻アンヌ=エモンヌは、毎年元旦に行われる国民への挨拶の際放送に登場。
フランソワ・ミッテラン
国家元首らを迎える際に妻ダニエールも同行したりとメディア露出あり。
しかし彼がエリゼ宮を去る数ヶ月前に隠し子の存在を公に。彼の葬式にて、正妻と第2パートナーであったアンヌ=パンジョは政治的な場面で初めて同じ画面に映った。
(これは死を予感して、財産分与などの心配から婚外子を公に認知させたらしい。)
ジャック・シラク
ジャーナリストでもあった妻ベルナデットによって、夫のプライベートを明かす本が発行された。
ニコラ・サルコジ
彼は任期中に離婚した初めての大統領。そして、新パートナーのカーラ・ブル二と「新しいカップル像」を見せた。
また彼は会見の際にこの件に対し「私たちのことを隠したいと思わなかった。ただある朝の私の写真を撮られてほしくはなかった。嫌な気分だ。そして、お判りの通り、これは真剣だ」と言及した。
フランソワ・オランド
彼は意に反して、不倫相手に会いにスクーターで移動しているシーンをパパラッチされてしまった。
彼らのエピソードから、大統領のプライベートとメディアの関係性の変遷を見て取ることができます。
フランスの政治評論家アラン・デュアムルは、オランドのパパラッチの件について、大統領のプライベートな生活は彼の政治的手腕とは全く影響のないものであるべきとし、このような写真が出回ることは、彼の生活を奪うことだとしました。
でも私がつい考えてしまったのは、日本の、育児休暇を取ったにも関わらず不倫が発覚した某元男性議員のこと。しかも奥さんが妊娠中の出来事だったそうな。政治家の政治的人生と個人的な人生は混同すべきでないとの考えもわかりますが、この場合は、彼の政見と行動が矛盾していますし、プライベートでの事実発覚・辞職によって、「こんなやつに男性の育児休暇を推進されて税金納めるところだったのか、危なかった」となるのもわかります。
今では、フランスにもたくさんのゴシップ雑誌があり、政治家もまるで芸能人のようにネタにされるそうです。それを見てどう思うかは置いておいて、どうしてそう扱うようになったのか、現状を顧みてみることも必要なのかもしれません。
参考動画
TV5mondeより。(フランス語)
Actualité mondiale | Enseigner le français avec TV5MONDE
君はともだち
先日から、第2セメスターが始まりました。こんにちは。
新学期、クラスが替わったり、何人か帰国したり何人かが新しく入ったり。
なかなか忙しくなってきたしかちゃんです。
さて、私が今留学中のオルレアン大学、フランス語クラス(IDF=Institut de Français)では、様々な学生が学んでいます。
私のように、大学間で提携があって交換留学制度を利用している学生や、
これからフランスで大学や大学院に入るためフランス語の資格所得を目指す学生、
また、フランス人配偶者がいてフランスでの生活のためにさらに語学力が必要な学生もいます。
そのため、国籍はもとより年齢も経歴もバラバラ。
でもクラスメイトはタメ口(tutoyer・チュトワイエ、主語を「君(tu)」として話す)です。
面白いのは、日本人同士で話すとき、
先輩であってもフランス語だと普通に同じクラスメイトとして同じ立場なのに、日本語でだと敬語になるところかな。
とはいえ、フランス語にも「敬語」はあります。
基本的に、知らない人や目上の人との話す際は、
「vouvoyer・ヴヴォワイエ」と言って尊敬語と丁寧語に当たる「です・ます調」、
主語は「あなた(vous)」です。
先生と話すときはもちろんこちら、そして先生が学生に話しかけるときもそうです。
たまに友達と話すように学生としゃべる方もいますが。(まぁブルーノ先生の場合は、どう見てもお父さんと子どもよね笑)
例えば、寮の廊下で初めて会った人ともこの「敬語」で話しかけるのが無難です。
が、パッと見た感じ同年代だったらタメ口も可、らしいです。
ただし、そこでSalut ! と挨拶するのはあんまりよろしくない。
「え、友達でもないのに、なんなのあいつ」みたいな印象になるとのことです。
そこらへんの距離感は日本と似てるかな?
(私はこのSalut ! とか、Coucou ! とかいった友達間の軽い挨拶を、日本語で「やっほー」だと認識していて、そう言うと他の日本人からは、今時「やっほー」はない、とか言われまくったのですが。。。
待って他に何があるの?え、てかみんなやっほー言わない。。。??)
フランス語と「友達」にまつわるお話
フランス語で「友達」を表す単語は、"ami"と"copain"、ふたつあります。
日本でもカタカナで「モナミ」とか「コパン」とか、
店や商品の名前に見かけたことがあるかと思います。
どこが違うの?
"Ami"は友達、
"copain"は知り合いよりも親しいけど、友達っていうほどでもない間柄。
なんだとか。
"Ami"だけでもなかなか大事な友達と表すようです。
その中でも一番の親友は、"le meilleur ami / la meilleure amie"と言います。
所有形容詞
ただし、”mon” copain, “ma” copineと言うと、彼氏・彼女の意に取られます。
普通、友達の話をするときに、あまり所有形容詞をつけません。
そうしてしまうと、「あの子は「私の」友達。だけど他は違うし」みたいになってしまうみたい。
不定冠詞(英語で言うa,an)を使います。「私の友達のひとり」というニュアンスです。
他には、
"pote"という言い方もあります。
翻訳をかけると「相棒、仲間」と出て来ますが、
むしろ「ダチ」みたいな感じで、ラップやポップスの歌詞によく見られます。
どれも人との友好関係を表す単語だけど、どれも同じではないとわかります。
"Ami"と"copain"の定義の違いは、フランス人の私の彼に教えてもらいました。
彼は、親から、また高校(Lycée・リセ)の哲学の授業から、
この「友達」の単語の違いと定義を教わったそう。
学校で扱うとはびっくりですが、人間関係でつまずきやすい思春期の高校生に、授業内で友達について考える機会があるなんて素敵ですよね。
ちなみにフランスのこの哲学の授業というものは、日本でいうと、高校倫理と小学校の道徳の授業を足して2で割ったようなもの、といえばわかりやすいでしょうか。
今までの哲学者やその思想についての知識だったり、人生の漠然としたテーマにディベートしたりするらしいです。
日本でいうセンター試験に当たるバカロレア(baccalauréat)にも、哲学の試験があります。
友達100人できるかな
某「素敵留学奨励プログラム」の研修にていただいたありがたいお言葉をいくつか覚えているのですが、その中に、
「留学中、信頼できる友達を100人作ってください。」
というものがありました。
昨今、友達といったらSNSでつながるだけでなれてしまうようなところがありますが、
この言葉の場合はそうではなく、まさに”ami”、生の語り合って分かり合える友達という意味だったように思います。
100人、ねぇ。なかなか遠い道のりだなぁ。。。